【歯周病、歯肉炎と歯周炎は何が違うのですか?】

歯周炎と歯肉炎は進行度で、歯周病はその総称です。

最初に覚えておいて欲しいのが、歯を支える歯周組織に起こる病気の総称が「歯周病」です。
その中で歯肉に炎症が起こっている段階を「歯肉炎」と言い、歯肉炎が進行して歯を支える歯槽骨まで炎症が及んだ段階を「歯周炎」と言います。そのため、歯肉炎と歯周炎は歯周病の進行具合の違いと言って良いでしょう。歯周病の初期の段階が歯肉炎で、進んだ状態が歯周炎となります。

現在は歯周病も早期発見・早期治療が大切です。何故かというと、歯肉炎の段階であれば適切な歯磨きで治ってしまうこともあるからです。しかし、それが歯周炎まで進行すると、歯肉を切除したり、歯肉を剥離して歯の根元に付着した歯石を取らなければならなかったり、歯周組織を再生する「歯周外科」の治療が必要になることもあります。場合によっては歯を抜くことも必要になるかもしれません。
そうならないために歯肉炎の段階で治療を受けることが大切です。

【歯周病がアルツハイマーの原因に?】

歯磨きを怠り、口腔内を不潔にしておくことは「歯周病」だけでなく「肺炎」の原因になることが分かっております。

とくにお年寄りの「肺炎」は深刻で、日本人の死因の肺炎が占める割合は10%程度ですがそのうちの95%がお年寄りです。

食べ物を喉に詰まらせてしまい細菌を含んだ唾液も肺に入ってしまうと「誤嚥性肺炎」が誘発されてしまいます。

「歯周病」が「糖尿」や「アルツハイマー」の原因になるという研究もされています。

具体的な症例や因果関係は発表されていませんが、歯周病菌が様々な毒素を出していることは知られています。

その毒素が血管から入り込み体に徐々に悪影響を与えている可能性があることが指摘されています。

「認知症」はある日突然起こる病気ではありません。本人の知らないところで徐々に病気が進行していきます。

「歯周病」を予防することが、年を取っても健康で若々しく生きていける秘訣ともいえますね!

【むし歯や歯周病は歯磨きで防げますか?】

むし歯や歯周病はむし歯菌や歯周病などの細菌が原因です。その細菌の塊が歯垢(プラーク)と呼ばれています。歯磨きでしっかりと歯垢を落とすことは、むし歯と歯周病を予防することに大変効果的といえますが、人によって磨き残しがある場合も多く、歯と歯の間の歯垢はデンタルフロスなどの歯間清掃用具を使って綺麗にする必要があります。

よって、むし歯や歯周病を防ぐポイントは

1.歯磨き

2.歯間清掃用具の使用

3.生活習慣の見直し

4.歯科医院での定期的なチェックとクリーニング

と言えるでしょう。

【歯周病と口内炎は関係があるのですか?】

基本的には関係はありませんが、入れ歯や歯周病が引き金になることはあります。

口の中の粘膜に出来る炎症を総称したものが口内炎です。口の中の粘膜ならば頬や唇の内側や歯ぐき、舌など、どこにでも出来てしまいます。口内炎が出来る原因は誤って噛んでしまった時などに出来る傷や、お口の中の衛生状態の悪さ、ビタミンなどの栄養不足、体力の低下やストレス、ウイルスやカビからの感染など様々です。口内炎が出来ると潰瘍が出来て痛くなったり食べ物や飲み物が口の中でしみたり、会話が不自由になりますので、なかなか辛い病気だと言えるでしょう。

同じ口の中で生じる病気なので、歯周病と口内炎が関係していると思う方もいるでしょうが、基本的にこの2つの病気は関係はありません。
ただし、入れ歯や矯正器具の不具合で口腔粘膜に傷がついたり、虫歯や歯周病などで口の中の衛生状態が悪いと口内炎になることもありますので、全く関係がないとは言い切れません。
このような場合は入れ歯の調整や虫歯や歯周病の治療が必要になります。

なお、口内炎の治療は口腔外科が専門ですので覚えておきましょう。

【歯周病の治療期間はどれくらいですか?】

重症度によって違いますので、一生付き合っていくつもりでメンテナンスをしましょう。
軽度であれば数回の通院で済みますが、重症化すれば1年以上掛かる場合もあります。

また歯科医師の考え方や治療方針によっても治療期間は異なります。
歯周病は高血圧や糖尿病などの生活習慣病と同じで慢性疾患です。

治療が済んでも終わりではありません。歯磨きは毎日降圧薬(血圧の薬)などを飲むのと同じで、治療期間の長短にこだわるよりも、長く付き合っていける歯科医を見つけましょう。

【歯石を取ったら歯と歯の間に隙間が出来てしまいました】

歯石を取った後の健康な形ですが、不安であれば相談をしてください。

歯科医院で歯石を除去してもらうと「歯ぐきが下がって隙間が広がり、以前より食べ物が挟まりやすくなった」とか「歯がしみるようになった」などという方が少なくないようです。特に歯石を除去する前に歯周病の症状が無かった人が逆に症状が出てしまい「納得がいかない」と感じる人が居てもおかしくありません。

歯ぐきが下がったのは、歯と歯の間を塞いでいた歯石を取ったことで歯ぐきの腫れが引いて、歯がしみるのは歯石を取った歯の根の部分が露出したためです。このような症状が出るのはある程度は仕方がないことです。何故ならば、歯石を取ることによって歯は「健康な形」を取り戻したと言えるからです。

ここでも大事なのはセルフケアです。歯と歯の間に挟まった食べ物は歯ブラシや歯間ブラシでしっかりと取りましょう。適切な歯磨きを続けていれば歯周ポケットも浅くなります。それでも歯周ポケットが気になる場合には歯科医師に相談してみてください。

【歯石はどうやって取れば良いですか?】

スケーリングとルートプレーニングの2種類の方法があります。

歯石を除去する方法には、歯の表面や歯肉縁上に付着した歯垢や歯石、そのほかの沈着物を「スケーラー」と呼ばれる器具を使って除去する「スケーリング」と、「キュレット」と呼ばれる器具で歯肉縁下の歯石を取って、歯垢などで汚染された病的なセメント質を除去して歯根面を滑らかにする「ルートプレーニング」の2種類があります。

通常は初めにスケーリングを行いますが、それでも歯肉の状態が改善しない場合や、既に歯周炎を起こしている場合はルートプレーニングが必要です。
歯石除去は歯科医師や歯科衛生士が担当しております。

【痛い思いをしないで治療は受けられますか?】

現在は無痛治療が普及しております。麻酔注射の痛みも気にならないほどになっております。

虫歯を削るときに代表されるように、歯科医の治療と言われると、どうしても「痛い」という印象がおありでしょう。治療で傷まないように麻酔をすると言っても、麻酔の針を刺せばチクッとします。しかし、麻酔の注射前に歯ぐきに表面麻酔をしてから注射をするので、注射針を刺すときの痛みを感じなくなってきます。

このように最近は「痛くない」治療を目指している歯科医院が増えております。痛いのが嫌で歯科医院に通えないという人も居るほどですので、痛みのない治療は魅力的です。痛みが心配な人は、歯科医院を受診する前に電話などで無痛治療をしているか確認をしてみましょう。

【歯周病に詳しい歯医者さんはどう探したら良いですか?】

歯科医師選びの目安は歯周病専門医です。しかし、まだ少ないのが問題なのです。

歯科医院で外部に広告を掲げて良い診療科は「一般歯科」・「口腔外科」・「小児歯科」・「矯正歯科」の4つです。この中で、歯周病治療を担当するのは一般歯科なのです。そうは言っても、一般歯科では虫歯や補綴もしますので歯周病が専門という訳ではありません。その中から歯周病の専門医を見つけるのは、到底難しいかもしれません。

こんな時に参考になるのが、日本歯周病学会が一定の臨床経験や知識などを満たした歯科医師に対して授与している「日本歯周病学会専門医」という資格です。日本歯周病学会のホームページにに専門医が居る歯科医院や病院が掲載されております。
しかし、問題なのは歯周病認定医がまだまだ少ないことです。全国に830人あまりしか居りません。しかも大都市に集中しており、中には1人も在籍していない都道府県もあります。
当院でも月に1日、日本歯科大学附属病院総合診療科の仲谷寛教授が来ております。

【他の病気があると歯周病になりやすいのですか?】

糖尿病は危険因子の1つで、歯周病との悪循環に気を付けましょう。

糖尿病の人は歯周病になりやすく重症化しやすいと言われております。糖尿病の場合は、高血圧が続くと血流が悪くなり、全身の細胞に酸素と栄養が送られなくなって体の抵抗力が低下してしまいます。そのため血管の細胞はもろくなってしまい、ちょっとしたことで傷がついて炎症を起こしやすくなってしまいます。口の中も同じように抵抗力が落ちているため、歯周病菌に感染しやすく血管ももろくなっているのですぐに歯ぐきが炎症を起こしてしまいます。このため糖尿病の人は歯周病になりやすく重症化しやすいのです。
さらに、歯周病があると糖尿病が悪化しやすいので、糖尿病があると歯周病になりやすく、歯周病があると糖尿病が悪化しやすいという悪循環なので、糖尿病の方は歯周病のケアには気を遣いましょう。